ー「六道御前(ろくどうごぜ)」はどんな作品?

1980年刊行の『西南役伝説(せいなんえきでんせつ)』は、西南戦争に翻弄されながらも必死に生き抜く名もなき農民や漁民たちによって語り継がれてきた声に耳を澄ました石牟礼道子初期の作品であり、その中の短編「六道御前」は、流浪の芸能者おろく婆さんが西南の役により天涯孤独になった壮絶な半生を語る、深く心を揺さぶる物語です。
生涯熊本で暮らし、土着の文化や芸能を愛し、現代文明を深く見つめ、社会から捨てられた最下層の人々の声なき声を聴き続けた石牟礼道子の、今こそ多くの人にご覧いただきたい作品です。
ー浄瑠璃芝居(じょろりしばい)とは?ー
「じょろりとは子どもの時分目にした三味線を伴奏に物語る芸能」と石牟礼道子は書いています。この作品では金子あいさんが「おろく」となって物語り、歌い、舞うとともに、三味線の佐藤岳晶さんが九州の様々な民俗芸能から取材し作曲した様々な音楽が、作家石牟礼道子さんを育んだ豊穣な世界に迫ります。何もない舞台に鮮やかに風景が見えてくることにきっと驚くことでしょう。
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作:石牟礼 道子   
1927年熊本県天草郡に生まれる。詩人・作家。1969年に公刊された「苦界浄土—わが水俣病」は文明の病としての水俣病を描いた歴史的な作品。1973年マグサイサイ賞、1993年「十六夜橋」で紫式部文学賞、2011年朝日賞、2002年「はにかみの国—石牟礼道子全詩集」で芸術選奨文部科学大臣賞。新作能「不知火」が東京・熊本・水俣で上演された。藤原書店刊行石牟礼道子全集が完結。その後も次々と著書の刊行が続いている。2018年2月10日没。
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ー出演者プロフィールー
【語り芝居】金子 あい(俳優・アーティスト)
東京藝術大学大学院環境造形デザイン修了。和洋を問わず現代劇から古典まで様々な舞台で活動。art unit ai+主宰し「平家物語」「六道御前」「いさかい」「気ままに源氏物語」などを上演。「平家物語」を全国で公演。「子午線の祀り」(第25回読売演劇大賞最優秀作品賞)「雁作・桜の森の満開の下」「中島みゆき夜会」日生劇場「アリスのクラシックコンサート」「アラジンと魔法のランプ」等に出演。3.11後は「フクシマを思う」を開催し続けている。能を喜多流粟谷明生に、新内節を鶴賀流第十一代家元鶴賀若狭掾(人間国宝)に師事。
 
【作曲・三味線演奏】佐藤 岳晶  
桐朋学園大学ピアノ専攻卒業後、パリ国立高等音楽院エクリチュール(作曲理論)科修了。地歌箏曲を二代米川文子師(人間国宝)に師事し、佐藤文岳晶の名で演奏活動も行う。近世邦楽の「内発的発展」を探る研究で東京藝術大学大学院音楽文化学専攻修了・博士(学術)。石牟礼文学創作作品に、《不知火─われ、蒼き苦海の底より咲き出で》、《三日月まんじゃらけ》ほか。京都女子大学准教授、国立音楽大学ほか非常勤講師。
【尺八・能管演奏】設楽 瞬山  
都山流尺八を川村泰山師に師事。NHK邦楽技能者育成会卒業。NHK邦楽オーディション合格。都山流本曲コンクール全国大会金賞・文部科学大臣賞受賞。演奏活動の他に演劇や語りの音楽として積極的に携わる。代表作に若村麻由美「小宰相身投」「木曽最期」、真野響子「夢十夜」、野村四郎、山本東次郎、櫻間金記「三酔人夢中酔吟」、野村萬斎、若村麻由美「千手」、近藤正臣「高瀬舟」、物語シアター「龍の子太郎」「あらしのよるに」「錦繍」。
【演出】笠井 賢一
今尾哲也(歌舞伎研究)に師事。劇作・演出家として古典と現代をつなぐ演劇活動を能狂言や歌舞伎や現代劇の役者達と続ける。「古事記」「源氏物語」「平家物語」、近松門左衛門、宮沢賢治と幅広く演出。多田富雄作「一石仙人」「花供養—白州正子の能」石牟礼道子作「不知火」等新作能を演出。アトリエ花習代表。2011年に熊本・水俣で「言霊 詩・歌・舞—石牟礼道子・多田富雄深き魂の交歓」に出演・演出。

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